現代ロシアの軍事戦略

 

昨今のウクライナ情勢について理解を深めるために読んだ。ロシアに関する軍事的な思想や戦略、兵器といった情報を近年の戦争・紛争状況と密に紐付けられて学べる良書であった。本書の電子媒体が発行されたのは2021年5月で、ウクライナ情勢が起きた2022年2月の時点では1年も経っておらず、最新の情報を手に入れることができる。S-400やキンジャールといったニュースで見かける兵器名についても解説が入っており現状の理解に役立った。しばしば耳にするハイブリッド戦争とはドローンによる無人攻撃やサイバー攻撃による新時代のものだと認識していたが、実際にはもっと広範かつ古くからある概念であることもわかった。

ロシアへの理解が深まるだけでなく、ウクライナ情勢において従来の予想を覆すようなウクライナ側の善戦についても「戦争とは人間同士の意志のせめぎ合いである」という言葉が正鵠を射ているように思われた。開戦直後に首都キーウ陥落の悲観論が流れる中で現地に留まり指揮を続けたゼレンスキー大統領の姿勢はまさに強固な意志の体現そのものであったからである。